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ミテルダケ
ナノニ
ココロガフアンテイ
++ちょこれーと。++
一歩踏み入れた瞬間。
いつものように、文具を買うために入った雑貨屋が、
異質な空間になっていることに気付く。
「うわぁ、ピンクぅ…」
年が明けて15日ほど。
もうそんな季節なのかと、思わずには居られない。
軽い眩暈を覚えて、立ち止まる。
息を呑んで、溜息を吐いて、
心を決めた後に、もう一度穂梓は周りを見回した。
店の飾りがすべて、心臓の形を模している。
そして…
「ちょこれーとばっかし。」
わざと片言で呟いて、穂梓はもう一度小さく溜息を吐いた。
2月14日 Valentine's Day
の一ヶ月前。
正直あまり良い思い出がない。
そもそも、民衆と一緒に騒ぐのが苦手だ。
と、穂梓は表向きにはそういう話をし、彼女の周りの人間も女らしいところを見せない娘ばかりであるために、お菓子の交換会なんていう微笑ましい光景と無縁な生活を送る。
馬鹿らしい。
阿呆らしい。
何が嬉しくて、チョコの形を変化させて、人に配るのだ。
クラスのギャル達を横目に、穂梓はそう公言していた。
そういうキャラを定着させていた。
そんな彼女も実は女の子で。
心ときめかせて、チョコレートを作っていた時もあるのだ。
作っていた時も、ね。
心の中で呟いて、苦笑する。
否、
毎年作っている。
大好きな、
だけど振り向いてくれない たった一人のために。
…問題なのは、彼女自身が大の甘いものが苦手…どうかすると製作中に砂糖アレルギーの症状を呈することであった。
どうしても上手く行かない。
途中で失敗するか、自分が倒れるかのどっちかであった。
そして
味見が出来ない。
もしきちんと出来上がっていたとしても、それを認識する味覚を彼女は持ち合わせていなかった。
だから。
「毎年作っている」
だけど
「渡せない」
それでも、いつか想いを伝えたいと、
そう思っている自分を穂梓は自覚していた。
『カンタン!誰でも出来る生チョコキット』
不意に飛び込んできた文字に、思わず反応する自分に穂梓は再び苦笑する。
苦笑しながら、手に取ってみる。
矛盾。
矛盾だらけだって分かってる。けど。
―― この通りに作ったら、私にも出来るかな
そう思ってしまうんだ。
財布の中身を思い浮かべて、一人頷く。
大丈夫。
今週の漫画の新刊を我慢すれば、買える、筈。
箱をそっと抱いて、あの人の顔を思い浮かべる。
今年こそは、きっと。
一人の乙女は、そっと微笑んだ。
2010.2.11
一昨年のバレンタイン作品。
言い回しおかしいとこありますけど、もしサイトに移すことがあれば、直しますね。
どうでもいいけれど、
「チョコ0個ディスコ」 ってツイッターに書いてあって、 笑いました。
トレンド入りって・・・ バルス! の時も思ったけれど、 日本人って阿呆ですよね。
私はラピュタよりナウシカが好きですまる